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スウェーデンで働く理由

社内で志願し、今年からスウェーデンのストックホルムオフィスで働くこととなった(仕事は変わらず、引き続き戦略ファームのコンサルタントである)。

個人的にはさまざまな角度から見てストックホルムというのは今もっとも働きがいのある場所であり、希望が叶って嬉しい限りなのだが、周囲からは(おそらくロンドンやNYを選んでいたら聞かれることも少ないであろう)「なんでストックホルム?」という質問を頂くことが多い。

今回は人生に何度もある機会ではないので、自分が何を考えてこの場所を選んだのかを改めて言語化しておきたい。

1. 人生のテーマを深められるか

社会人生活10年が過ぎ、ようやく「これになら人生を捧げられる」という自分なりのテーマの輪郭が見えてきた。

人生を捧げられるとはつまり、仮に自分がチャレンジして社会的・経済的に失敗した姿を想像しても「これに全力を尽くした結果なら後悔はない」と言い切れるということであり、この年齢で見つけられたのは十分幸運な方であると思う。

私のテーマはまだ洗練されたフレーズに落とし込めてはいないが、そのまま言うなら「キャリアを追求する人も日々自然に触れられる世界にしたい」といった形になる。これについてはまたどこかで詳しく書きたい。

スウェーデンは憲法で「自然享受権」が全ての個人に保証されているなど、人間と自然の関わりについて考えられてきた歴史の深さは世界トップクラスを誇ると言ってよい。なのでストックホルムという都市は北欧諸国全体の経済的中心地でありながら、街のそこかしこに緑や子供の遊び場があり、少し歩けば本格的な森にも入って行ける。上記のテーマを体感・追求するにはこの上ない場所だ。

正直に言ってコンサルタントとしての生存・成長戦略以上に、このテーマが今回の意思決定における最大のポイントとなった。

2. 「中堅国のルール」で戦えるか

日本の知人に今回の海外転勤について伝えるとしばしば「日系企業の案件とか担当するの?」と聞かれる。残念ながら今の仕事でそういうものは存在しないのだが、自分も逆の立場ならそう聞いた気もするし、実際に日系企業で海外駐在した際には「海外とはいえ日系企業だから」問題無く戦える、という安心感があった。

しかし経済的中堅国(=近い将来の日本の姿)のリーダー層に「出身国を自分の強みとして活かす」という発想は無く、裸一貫で海外に出て戦っている人が多い。彼らにとって英語や海外進出は得意とか不得意とか言っていられる次元のものでは無く、嫌でも自分の知的能力のフルパフォーマンスがその中で計られてしまうという「ゲームのルール」である。私はまだ同じゲームを戦い抜いた経験が無いという一種のコンプレックスがあり、それを克服する機会を伺っていた。

この観点からスウェーデンは非常に理想的な環境だ。まず第一に、英語のレベルが絶妙である。

威勢の良いことを前述したが、仮に私が米国や英国のプロフェッショナルファームに行けと言われたら、かなり周到な戦略と準備が無ければ厳しいと思っている。ネイティブ英語が言語能力の基準レベルとされる環境の中で、第一線で活躍できるイメージは正直言って湧かない。

その点、他の国では少なくとも「お互い英語は母国語ではないけれど、頑張って分かり合おう」という共通了解が成り立っている。かといって「英語だけだと仕事の範囲が狭まってしまう」ようだと困るのだが(日本はもちろん、西欧諸国でも程度は違えどこの問題はある)、北欧は「英語は母国語ではないがほぼ通じる」という絶妙なレベル感なのが大変ありがたい。

その理由が第二のポイントにも当たるのだが、北欧企業の「海外で戦うことは大前提」というマインドセットから学べることも多い。

スウェーデンの国土面積は日本よりも広いが、人口は東京都よりも少なく、「市場」としてはあまりにも魅力が薄い。そんな中で一定以上のビジネスを成立させようとすれば、海外市場を狙いに行くことは当然の選択となる。

スウェーデン自体の経済規模に比して、EricssonやIKEA、Volvo、H&M、Spotifyなどグローバル企業の輩出数が多いことも、上記の背景が影響していると言われる。ただしこれは一種の神話となっている部分もあると感じており、そこから具体的な学びがあるのか、「幽霊の正体見たり」となるのかも含めて興味を持っている(このあたりの感覚は「MBBなるものを一度内側から見てみたい」と考えた時と似ている)。

3. 「子育てとキャリアの両立」のヒントを得られるか

こちらも半ば北欧諸国の社会モデルに関して神話のようになっている部分だが、スウェーデンは子育て先進国としてもよく知られている。

私にとってキャリア上の夢の追求も大事なことだが、それ以上に子育てを大切にしたいという思いが強い。あたかも「スウェーデンでは全てがうまくいっている、日本も全面的に見習うべき」とでもいうような論調には私は懐疑的だが、この点についても得られるヒントがあるのであれば最大限に吸収していきたいと思う。

以上述べたようなさまざまな理由から、スウェーデンは今の自分が働く上で世界有数の魅力的な場所であると考えている。